まとめです

まさし&ゆう In 〇〇しないと出られない部屋

登場人物「ゆうーー」「びーむ」 2317字

朝起きると、知らない部屋にいた。
一面真っ白な壁と天井に、なんとも言えない金属の匂い。壁の一箇所にはテレビのモニターが掛かっていた。
ふと隣を見ると、知らない誰かがちょうど目を覚ましていた。

「すみません、誰ですか?」
「君こそ誰?」

姿は見たことはないが、声には聞き覚えがあった。

「ちょっと立ってくれる?」
「いいけどなんで?」

少し太っていて小学生のような風貌、聞き覚えのある声...もしかして...

「ゆう?」
「ごめん、ほんとに誰?」
「俺びーむだよ。ゆうじゃなかった?」
「え、びーむ?マジ?」
「やっぱりゆうか!」
「でさぁ、今これどういう状況?」
「俺もわからない。起きたらこの部屋にいた」
「こわ。ミステリーじゃん」
「でも一つ手がかりはあるっぽい」
「なに?」
「あそこのテレビあるじゃん」
「うん」
「その下に赤いボタンがあったんだよね」
「それ絶対押したら死ぬやつ」
「じゃあゆう押せよ」
「やだよ」
「じゃんけんな」
「いいよ」
「「最初はグー」」
「「じゃんけん」」

ポイッ!

負けた。

「はい。おつびむ」
「今の練習な」
「いいえ。」
「は?」
「死んだら弔ってやるよ。じゃあなびーむ、今まで楽しかったよ(泣いたフリ)」

負けたんだししょうがないか。死んだら死んだでその時だ。

ポチッ

ザーザザーッ

テレビの電源が付き、砂嵐が流れた。

「死ななかったわ」
「うん。残念なんだなぁ〜」

少し時間が経つと、画面に猿の仮面を被った人間が現れた。

「よお!ガイジ共」

「絶対中身ひできじゃん」
「こわすぎ」

「ここは〇〇しないと出られない部屋です!」
「〇〇の中は自分で考えて、どうぞ」

「は?」
「絶対SEXじゃん」
「は?びーむとSEXするくらいなら死ぬね」
「1回詳しく部屋調べようぜ。他の出方があるかもしれない」
「そうだな」

「こういうのは壁紙を剥がすんだよな。青鬼配信で習った」

ペラッ

「え?マジ?適当に言ったんだけど」
「ゆう能じゃん」

正方形の部屋の中の、ベッドの反対側の位置に仕掛けがあった。
壁紙をめくると、エレベーターのような金属の扉が出てきた。
開けられるんじゃね?と思って二人で試してはみたが、さすがに開きそうにはなかった。

「ベッドの下とか...」
「あーなんかあるわ」

鍵か何かか?と軽い期待をしていたが、その期待は裏切られ、気絶しそうな真実と絶望を叩きつけられた。

「ローションとコンドーム...?」

うそだろ?

「これ、もしかしてマジでヤらないといけないやつ?」
「かもしれないな」

「うそだろ...流石に冗談キツいって...」

狭い部屋をくまなく探したが、他に出られそうな手段はなかった。正面にあった扉も、存在するだけで開けられそうにはなかった。

「制限時間ないし、1回寝れば治るべ」

そんなことでこの状況がどうにもならないとは自分でもわかっているが、それにすがるしかなかった。

「そうだな」

Zzz


「おはよう」
「うん」

やはりなにも変わらなかった。

「寝るときに考えてたりけど、やっぱりキツいわ。俺このまま死ぬわ」

ゆうの意向はそのまま野垂れ死ぬことらしい。
自分も寝る時に考えてみて『一度の恥で生き残れるならいいのでは』と考えたが、どうやらゆうとは違う意見だったみたいだ。
じゃんけんで負けた時は死ぬ覚悟でいたのに、今生き残れる方法を選択しようとしている。
おそらく俺は、極限のときにはベターな選択肢を取る人間だったみたいだ。
エイル1面もちゃんと作っておけば今みたいにはならなかったんだな、と今更にして考えたが、それはやはり今更すぎた。


それから3日が経った。というよりかは3回寝た。

「そろそろ腹減ったな」
「その身長と腹ならしばらく生き残れんだろ」
「は?うるせぇ」

この会話も、エネルギーの浪費でしかない。

「なぁ」
「ん?」
「もうさっさとヤらねぇか?そうすれば生き残れるしうまいモノも食えるんだぞ?」
「いやだね。プライドを保ったまま死ぬよ、俺は」

ゆうの意思は堅かった。

その夜、悪魔のような発想が頭に浮かんだ。

『夜寝てるうちに合意なしでレイプすれば、扉開くんじゃね?』

この世の終わりのような発想だったが、今の状況もこの世の終わりなのだ。
これ以外に取る選択肢がなかった。

ゆっくりと、ゆうのズボンを下ろした。

「まさしはいいよな、そんなに生き残ることに必死になれて」

心臓が止まった。

「」




が、よく見てみるとしっかりと寝ている。寝言だったみたいだ。
寝言だとわかって、小声で返してやった。

「ゆうはいいよな、最後までプライドを持てて。俺無理だったもん」

その時、モニターに急に電源が付き、耳を裂くほどの轟音が響いた。

パッパラパッパッパー♪

その音で、ゆうも起きたみたいだ。

「うるせぇなぁ静かにしろや」
「いや...テレビ見ろ」
「なんだよ」

「おめでとう!」

「は???」

「正解は"二人で褒め合わないと出られない部屋"でした!いや〜まさか出られるとは思わなかったから、俺は嬉しいよ」

ゆうはキョトンとしている。当然だ。

「俺なんか言ったっけ」
「『まさしはイケメンでイケボでパズル上手くて仕事できる』って言ってたよ」
「嘘乙。で、まさしはなんて言ったんだよ」
「ゆうはチビでデブでマスコットみたいだねって」
「絶対違うだろ」


「てかさ、なんで俺ズボン脱げてんの?まさしなんかしただろ」
「俺はぴよ以外手を出さないから」
「犯罪者乙。通報するわ」
「こわ」

兎にも角にも、生き残ることができたんだ。
扉を開けると、白い光に包まれ、気を失った。



朝起きると、いつもの部屋にいた。染みた汚い布団に、無造作に捨てられたゴミの集まった匂い。
帰ってこれたんだ。これまでのことが夢ではない確証がある。

起きた手に鼻を近づけると、扉を開けた時に付いたであろう金属の匂いがしていたからだ。

END

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